生成AIに何かを頼むたび、「あなたは◯◯の担当者です」「専門用語は使わずに」といった前置きを毎回書いていないでしょうか。内容は同じなのに、チャットを新しく開くたびに同じ説明をやり直すのは、それだけで時間がかかります。
この手間を減らすための設定が「カスタム指示」です。自分の立場や、答えてほしい形式をあらかじめ登録しておくと、以降のやりとりにそれが反映されます。この記事では、カスタム指示の考え方と、何を書くと効きやすいのかを整理します。
カスタム指示とは何か
カスタム指示は、生成AIに対する「常に効いている前置き」です。毎回のプロンプトに書く代わりに、設定として一度登録しておく形になります。サービスによって呼び名と置き場所が違うため、代表的な2つを確認しておきます。
ChatGPTの場合
ChatGPTのヘルプセンターによると、カスタム指示は「ChatGPTに考慮してほしいことを共有できる機能」と説明されています。設定場所はWeb版・デスクトップ版が「設定 → パーソナライズ → カスタム指示」、iOS・Android版が「設定 → ChatGPTをカスタマイズする」です。
同ページでは、設定の変更は既存の会話も含むすべてのチャットに即時反映されるとされています。また、この機能はすべてのプランで利用でき、入力できる文字数は無料プランが1,500文字まで、有料プランが5,000文字までと記載されています。
※記載の仕様・条件は2026年9月時点で公式ヘルプに掲載されていた内容です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
Claudeの場合
Claudeでは「プロジェクト」という単位で、専用のチャット履歴とナレッジベースを持つ作業スペースを作れます。公式サポートページでは、プロジェクトごとに資料やテキストを登録できるほか、プロジェクト単位の指示を設定して回答を調整できると説明されています。
プランによる違いもあります。無料アカウントは作成できるプロジェクト数が最大5件で、有料プランではナレッジの容量を拡張する仕組みが使えるとされています。つまりChatGPTのカスタム指示が「アカウント全体に効く設定」なのに対し、Claudeのプロジェクト指示は「案件ごとに切り替える設定」に近い考え方です。
何を書くと効きやすいのか
カスタム指示は長く書けば効くわけではありません。毎回のやりとりで繰り返している内容だけを移すのが基本です。目安として、次の3種類に絞ると扱いやすくなります。
- 自分の立場と前提:職種、扱っている商材、読み手が社内か社外か。「中小企業の総務担当で、社内向けの文書を書くことが多い」といった粒度で十分です。
- 出力の形式:結論を先に書く、箇条書きを使う、文字数の目安、敬体か常体か。形式の指定は効果が見えやすい部分です。
- 避けてほしいこと:カタカナの専門用語を使わない、出典が確認できない数字を書かない、など。
逆に、その案件だけで使う細かい情報は設定に入れないほうが無難です。常に効いてしまうため、別の作業をしているときに不要な前提が混ざります。案件ごとの情報は、プロジェクト単位の機能か、そのチャットの中で渡すほうが管理しやすくなります。
カスタム指示で失敗しやすいパターン
よくあるのは、設定を作り込みすぎて何が効いているのか分からなくなるケースです。指示同士が矛盾していると、生成AI側がどちらを優先したのか追いにくくなります。書き足すときは一度に1項目ずつにして、出力がどう変わったかを見てから次を足すと原因を切り分けられます。
もう一つは、情報管理の観点です。カスタム指示には自分の勤務先や担当業務を書くことになるため、社内情報や取引先名をどこまで入れるかは、会社のルールを確認してから決める必要があります。生成AIに渡してよい情報の線引きについては、仕事で生成AIを使う前に|著作権と情報管理で押さえたい基本で整理しています。
メモリ機能・プロジェクトとの使い分け
似た仕組みに「メモリ機能」があります。こちらは、やりとりの中で出てきた情報をAI側が覚えていくものです。カスタム指示が「自分で書いて登録する固定の前提」なのに対し、メモリは「会話から蓄積されていく情報」という違いがあります。仕組みと注意点は生成AIのメモリ機能とは?会話をまたいで覚える仕組みと注意点にまとめました。
使い分けの目安はシンプルです。どの作業でも変わらない前提はカスタム指示、案件ごとに切り替わる資料や背景はプロジェクト、そのときだけの細かい条件はチャット内の指示。この3層で考えると、設定が肥大化しにくくなります。
実務での効果が分かりやすいのは、同じ形式のアウトプットを繰り返し作る作業です。たとえば資料のたたき台づくりでは、構成の型を指示として固定しておくと、毎回の指示が短くなります。具体的な進め方は生成AIで資料作成を効率化する手順|構成づくりとスライド化のコツで解説しています。
まとめ
カスタム指示は、生成AIの精度を劇的に上げる魔法の設定ではありません。ただ、毎回書いていた前置きを省けるぶん、本題の指示に集中できるようになります。まずは自分の立場と、出力の形式の2点だけを登録して、1〜2週間使ってみるのが現実的な始め方です。
設定を変えても出力が思ったように変わらない場合は、指示の書き方そのものを見直したほうが早いこともあります。基本のコツと、つまずきやすい点は関連記事で確認してみてください。独学で手応えが出ない場合は、講師に添削してもらえる環境を検討する選択肢もあります。
よくある質問
カスタム指示は無料プランでも使えますか?
ChatGPTの公式ヘルプでは、カスタム指示はすべてのプランで利用できると記載されています(2026年9月時点)。ただし入力できる文字数に差があり、無料プランは1,500文字まで、有料プランは5,000文字までとされています。プランごとの条件は変更されることがあるため、利用前に公式サイトで確認してください。
設定を変えると、過去のチャットにも影響しますか?
ChatGPTの公式ヘルプには、カスタム指示の変更は既存の会話を含むすべてのチャットに即時反映されると記載されています。過去の会話を続きから再開したときにも新しい設定が効くため、意図せず前提が変わっていないか確認しておくと安心です。
どのくらいの長さで書けばいいですか?
長さよりも、毎回繰り返している内容かどうかで判断するほうが実用的です。自分の立場、出力の形式、避けてほしい表現の3点であれば、数行ずつでも十分に効果が出ます。まず短く書き、足りないと感じた項目だけを追加していく進め方が管理しやすくなります。
仕事の情報をカスタム指示に書いても問題ありませんか?
会社によって、生成AIに入力してよい情報の範囲は異なります。社内規程やガイドラインで禁止されている情報が含まれていないかを先に確認してください。判断が難しい場合は、企業名や個人名を伏せた抽象的な書き方にとどめ、具体的な資料はその都度チャット内で扱う方法もあります。

