生成AIを使えば、資料づくりやライティング、リサーチといった作業を個人でも引き受けやすくなりました。ただ、案件を探す前に必ず片づけておきたいことがあります。勤務先の就業規則の確認です。
この記事では、AI副業を始める前に就業規則のどこを見ればよいか、会社にどう伝えるか、確認したあとどう動き出すかを順番に整理します。
「副業禁止」は法律ではなく会社のルール
まず前提として、副業そのものを一律に禁じる法律はありません。厚生労働省が公開している「モデル就業規則」でも、労働者は勤務時間外に他の会社等の業務に従事できると定めたうえで、労務提供上の支障がある場合や企業秘密が漏洩する場合などに限って制限できる、という構成になっています。国としては容認の方向に整理されている、と考えてよいでしょう。
ただしこれはあくまでモデルであり、実際に自分に適用されるのは勤務先が定めた就業規則です。会社によっては届出制、許可制、あるいは職種によって制限を設けている場合もあります。「世の中は副業OKの流れだから大丈夫」ではなく、自分の会社の条文を読むところから始めてください。
どこを見れば書いてあるか
就業規則は、社内イントラや人事システムに掲示されていることが多く、労働基準法上も従業員がいつでも確認できる状態にしておくことが求められています。見当たらない場合は人事・総務に「就業規則を確認したい」と聞けば問題ありません。副業の話を切り出す前段階なので、身構える必要はないでしょう。
就業規則で確認したい5つのポイント
条文を眺めるときは、次の5点に絞って読むと判断しやすくなります。
- 副業の可否と手続き:全面禁止か、届出制か、許可制か。届出制なら書式と提出先も確認します。
- 競業避止:勤務先と同業・競合にあたる仕事を制限する条項があるか。
- 秘密保持:業務で知り得た情報の取り扱い。AI副業では特に重要です。
- 労働時間・健康管理:深夜や休日の稼働に関する記載、長時間労働への配慮。
- 会社の名前や肩書の使用:発信活動を伴う副業では、所属を出せるかどうかが関わってきます。
競業避止でつまずきやすいケース
意外と見落とされがちなのが競業避止です。たとえば人材業界で働いている人が、副業でAIを使って採用支援のコンテンツを請け負う。あるいは広告代理店の社員が、副業で同じ業種のクライアントの広告文を書く。こうしたケースは、直接の競合でなくても引っかかる可能性があります。
AI副業でとくに注意したい情報の扱い
生成AIを使う副業には、他の副業にはない固有の論点があります。入力した情報がどこへ行くのかという点です。
本業で扱っている資料や顧客情報を、副業の作業でAIに読み込ませる。これは秘密保持の観点から明確に避けるべき行為です。「効率化のために社内資料をテンプレートとして流用する」といった軽い気持ちでも、規程違反になり得ます。副業用の作業環境は、本業の端末・アカウントとはっきり分けておくのが無難でしょう。
逆方向も同様です。副業のクライアントから預かった情報を、本業の会社の端末やクラウドに置かない。境界線を最初に引いておくと、あとで判断に迷わずに済みます。生成AIと情報管理の基本については仕事で生成AIを使う前に|著作権と情報管理で押さえたい基本でも整理しています。
確定申告のラインも頭に入れておく
就業規則とは別に、税金の話も早めに把握しておきたいところです。給与所得者で副業所得が年間20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要になります。住民税は金額にかかわらず申告が必要なので、迷ったら居住地の自治体窓口や国税庁のサイトで確認してください。※税務上の取り扱いは個別の状況によって異なります。最新の要件は国税庁・お住まいの自治体の公式情報でご確認ください。
会社への伝え方と、届出の進め方
届出制・許可制の会社であれば、いずれ申請することになります。伝え方で押さえておきたいのは、「本業に支障が出ない形であること」を具体的に説明できるかどうかです。
- 稼働時間帯(平日夜・土日など、本業の勤務時間と重ならないこと)
- 業務内容(競合にあたらないこと、守秘義務に触れないこと)
- 使用する端末・アカウント(本業のものを使わないこと)
- 想定する稼働量(月あたり何時間程度か)
確認が済んだら、小さく動き出す
就業規則の確認と届出が済んだら、あとは実際に手を動かす段階です。ここで大きく構えすぎると動き出せなくなるので、最初は「無料または低コストで試せる範囲」に絞るのがおすすめです。何にいくらかかるかはAI副業に必要なツールと初期費用|無料で始められる範囲の見極め方で具体的に整理しています。
案件の探し方については、クラウドソーシングから入る人が多い印象です。提案文の書き方や単価の考え方はAIでクラウドソーシング案件を受注するには|提案文と単価の考え方を参考にしてください。ジャンル全体を俯瞰したい場合はAI副業の始め方まとめもあわせてどうぞ。
まとめ
AI副業を始める前にやることは、案件探しではなく就業規則の確認です。副業を一律に禁じる法律はありませんが、適用されるのは自分の会社のルール。副業の可否と手続き、競業避止、秘密保持、労働時間、社名の使用という5点を押さえておけば、判断に必要な材料はそろいます。
生成AIを使う副業では特に、本業の情報を副業の作業に持ち込まないこと。端末とアカウントを分けるだけでも、多くのリスクは避けられます。手続きを先に済ませて、気持ちよく始めましょう。
よくある質問
就業規則に副業の記載がまったくない場合はどうすればいい?
記載がない=自由に始めてよい、とは限りません。情報セキュリティ規程や入社時の誓約書に関連する条項が置かれているケースがあります。それでも見当たらない場合は、人事・総務に「副業について社内の取り扱いを確認したい」と問い合わせるのが確実です。口頭でも記録が残る形(メールやチャット)で確認しておくと、あとで認識のずれが起きにくくなります。
公務員でもAI副業はできますか?
公務員は国家公務員法・地方公務員法で営利企業への従事等が制限されており、民間企業とは前提が異なります。許可を要する範囲や、許可なく行える範囲は自治体・所属によって運用が分かれるため、必ず所属先の人事担当に確認してください。この記事の内容は民間企業の会社員を想定したものです。
副業で生成AIの有料プランを契約した費用は経費になりますか?
副業の収入を得るために直接必要な支出は、一般に必要経費として扱われます。ただし本業でも私用でも使っているツールは、使用実態に応じた按分が求められることが多く、判断は個別の事情によります。領収書と使用状況の記録を残したうえで、税務署や税理士に確認するのが確実です。当サイトは税務の専門家ではないため、具体的な計上方法の助言はできません。
届出を出したら会社から止められそうで不安です。
会社が制限できるのは、本業への支障、競業、秘密漏洩、信用毀損といった理由がある場合が中心です。逆に言えば、稼働時間・業務内容・使用環境を具体的に示して、そのいずれにも当たらないと説明できれば、承認されやすくなります。相談前に条件を整理しておくことが、いちばんの準備になります。

